EBL?

 EBL(Evidence Based Librarianship)についての雑誌の記事(情報の科学と技術  Vol.57, No.5(20070501) pp. 226-232*1)を読んだ。その名の通り、根拠に基づく図書館業務。でもこれだけじゃあさっぱりわからん。カレントアウェアネス-E No.97 2006.12.20に分かり易く述べられているので、ちょっと拝借。

図書館業務に関する回答可能な「質問」を設定し,それを解決するエビデンスを発見し,評価し,活用し,意思決定に適用させる。エビデンスとして統合されるものは,利用者からの報告,実務者の観察,あるいは研究結果から抽出された事実である。このエビデンスの評価に基づいて,図書館の様々な業務,すなわち蔵書構築,レファレンスサービス,利用者教育,マーケティング等を行っていく。

なんだかいまいちつかみづらいですが、つまり「科学」的根拠に基づいた図書館業務マニュアルのデータベースを作ろうという話なんだろうか。全くまだ運用段階ではなくて構想の段階のようなので、どうも具体的な像がつかめない。
 EBLをもし導入するとして、そのメリットはなんだろう。研究が実務に直接反映されることだろうか。確かにいま図書館は意思決定をしなければならないときに路頭に迷うことが多いのかもしれない。そうゆうときに科学的根拠のあるプランを立てることができれば、対外的にも対内的にも説明がしやすいことは確かだ。変なしがらみや、なんとなくあるような規範意識や根拠のない倫理観に惑わされずに方針を決められそうな気もする。
 でも、現場でもし運用するとなると2つほどしっくりこない。1つ目はEBLがもともと医療の現場でのEBM(Evidence Based Medicine)から発展した考えかただということ。医療の現場で使われるEBMはそのプロセスのなかで最初に形成される「質問」が合意しやすいのではないかと思う。なぜなら、その最終目的が患者を治療することだから。*2でも図書館の最終目的ってなんでしょうか。むしろそれがいま大きな問題となって揺らいでいるのではないでしょうかねえ。例えば、病院は病気を治療してもらいに行くところ。じゃあ図書館は?目的がわからなければ、「質問」を作ろうにも職場での合意が形成できないのではないかと思うし、目的がはっきりしていなければ、科学的なエビデンスを得ても、意思決定できないような…。
 2つ目は、一つ目とも関係してくるけども、図書館の組織的な問題。日本のほとんどの図書館は地方公共団体や大学、企業などに属している。ということは当然意思決定にはそれらの母体となる組織の意思決定が大きく関係してくるわけです。場合によってはそちらの方が比重が大きい場合もあるのだと思います。そうゆう場合に、科学的エビデンスは効果を持つのかということです。エビデンスが無視されてしまう恐れがかなりあるんじゃないでしょうか。
 ここで一つ目の危惧と関係してくるわけです。図書館と図書館の母体となる組織に図書館の目的というものがある程度合意されていれば、あとはエビデンスで細かな意思決定は可能かもしれませんが、その最初の合意はなかなか大変なのではないかなと。

*1:CiNiiで書誌と抄録だけ見られます。http://ci.nii.ac.jp/naid/110006250969/

*2:例外も考えられるけども、多くはこの目的だと思うのですが、どうでしょう。根拠はありません