本の修復

 ハーバード大学図書館に行かれている江上さんのブログに、こんな話(http://hvuday.seesaa.net/article/55982154.html)が書かれていました。ハーバード大学図書館は資料の保存に力を入れているのですねえ。資料を保存することが社会的に価値のあることだと認識されていないとこれはできないことだと思いました。やはり日本でやるのは至難の業だと思います。私のいる図書館も一般書に関しては多少修理をしていますが、業務の合間にちょこちょこと行うくらいで、専門に修理をしている人なんているはずもなく、その時間すら取ることができないのが現状です。本の修復はけっこう楽しい作業なのですけどね。
 この資料の保存のこと1つ考えても、図書館の業務は1つ1つをきちんとやろうとすると現在より時間もお金もかかります。ただそのなかにはその1つ1つを手を抜いてやったとしても今日、明日に影響が出るわけではない仕事もあります。予算が少なければ当然それらの仕事が手抜きになります。しかし、それらの手を抜いた仕事は五年後、十年後、百年後に必ずツケが回ってきます。図書館の役割はなんなのか、その役割のために図書館は何をしなければならないのか。これらがどれだけ具体的に社会に認識されているかによって、図書館が長期的視野に立った仕事にどれだけ時間と金をかけることができるかが決まってくるんでしょう。難しいもんです。自分が今本が読めれば後のことなんて知ったこっちゃないと思う人は多いでしょうから。なんて刹那主義的な図書館観。
 
 と、嘆くのも大事なのですが、江上さんはブログのなかで、「効率的に仕事をすること」ことの意義はなんなのかについても考えを巡らせていらっしゃいます。これはさっきの話よりももっと重要です。江上さんも書かれていますが、うらやましがってもしょうがないので。(うらやましいですけど)
 確かに現在日本でも図書館は効率化を求められています。もちろんこれは図書館に限った話ではないけれど。ただ、図書館において、「効率的に仕事をする」のは一体何のためなのかはあまりはっきりしていません。図書館、そして図書館を運営している組織はそのほとんどが利潤を追求する組織ではないからいまいちはっきりしないのかもしれません。最近は大学なんかは市場原理が入り込んできてますけど。図書館は図書館の「効率」とはなんなのかを考えねばならんのですね。この点から考えても、ハーバードがどんなんなってるかはとても興味あるところです。貴重な情報と興味深い意見に感謝すると共に、これからの江上さんのブログを楽しみにしたいと思います。