アウトソーシングのはなし(『情報の科学と技術』vol.57 No.7)

 『情報の科学と技術』vol.57 No.7はアウトソーシングの特集号です。ちょっと記事を読んでみました。アウトソーシングをするのには目的を明確にしてからやらなければだめだと書いてありました。*1それはその通りだと思います。
 結局アウトソーシングという制度をどう使うかという話です。掲載論文にも書いてありましたが、使うのなら、その図書館にとってのコア・コンピタンスがどうゆう部分なのかをはっきりさせておかなくてはならないでしょう。安い労働力を得たい。司書を自分の組織で面倒見たくない。などの消極的なアウトソーシングの理由ではなくて、広い意味でのサービスの向上やスキルを高めていくために戦略的にアウトソーシングを利用していく必要があるのだと思います。(消極的なものは「アウトソーシング」ではないかもしれませんが…)
 確かにアウトソーシングをすれば安い労働力を得られます。でも目先の経費削減にとらわれて、安い労働力を獲得するためだけに無計画にアウトソーシングを進めていけば、いつかひずみが生じます。図書館におけるアウトソーシングが経費削減に繋がるのは、司書が安い賃金や、不安定な雇用条件に甘んじているからに過ぎません。そんな雇用の状況をいつまでも維持することが図書館の業界にとって良好なものだとは思えないし、またサービスやスキルの低下にも結びつきます。経費削減につとめるのは大事なことです。そのために安い労働力も必要だとも思います。しかし、それと同時に図書館が自身の活動、経営方針をしっかりと示し、図書館の重要性を、しっかりとステークホルダーである利用者と大学経営者に認識して貰い、予算を獲得するのが重要なのだと思います。そしてさらに、図書館側も、委託業者側と共に、業者に所属する司書の雇用条件も考えていかなければならないと思います。そうすることが結果的には図書館の運営を円滑にしていくのではないかと感じました。

 追記

 この記事を書いた後に見つけたのですが、min2-flyさんも『情報の科学と技術』vol.57 No.7ついて書かれていました。

あと、少子化で財政難=コスト削減に対応しなきゃ、って文脈からしか図書館を語れないってことは、図書館が学生や研究者を惹きつける大学の競争資源になる可能性は端っから放棄してるとみなしてよいのかな。(id:min2-fly:20070723)

 その通りだと思います。なぜ競争資源だと考えないのかはかなり不思議なところです。しかし、図書館の人員を削減するその一方で、例えば大学図書館の地域住民への開放という文脈では、図書館を大学と地域の結びつきを強めるための政治的なカードとしてみなしているわけです。大学における「競争力」とは一体何なのだろう。どうも外面だけを良くしようとしている気が…。

*1:島田達巳.「経営におけるアウトソーシング」『情報の科学と技術』vol.57,no.7,p.329