限界芸術論

限界芸術論 (鶴見俊輔集)

限界芸術論 (鶴見俊輔集)


 著者は芸術を三つに分類して考えている。純粋芸術、大衆芸術、そして限界芸術に分類している。純粋芸術は専門家による専門的享受者のための芸術、大衆芸術は専門家と企業家が制作し、大衆が享受する芸術。限界芸術は非専門的芸術家が制作し、非専門的享受者が享受する芸術。
 現在、すべての芸術活動をこの分類に当てはめるのは無理があると感じるが、分類はともかく限界芸術という考え方は非常に重要だと感じた。著者は限界芸術を、生活に密着した芸術として位置づけていいる。アルタミラの壁画に始まり、落書き、民謡、盆栽、花火、都々逸宮沢賢治などだ。芸術活動の中でもっとも芸術として認識されづらい限界芸術が、社会の中で「無駄なもの」として重要な役割を果たしてきたことを見直し、その芸術性を見直すことは、芸術が日々の生活の中からどのように生まれてきたかを明らかにし、「芸術」という言葉のもっている文脈も浮き彫りにするのではないかと思った。