日本文化―モダン・ラプソディ

日本文化 モダンラプソディ/渡辺裕

日本文化 モダンラプソディ/渡辺裕

 邦楽という音楽のイメージを一新する本。
 また日本における西洋音楽の受容の研究としてもとても重要な研究だろう。
 格好良いと思っているもの。本物だと思っているもの。格好悪いと思っているもの。まがい物だと思っているもの。私たちは音楽を聴くときに、いつも何かを基準にこれらを判断している。基準は人それぞれ違うものであっても、それを自分の感性だと信じて、疑うことはほとんどない。感性を好みと言い換えてもいい。音楽の好みは人それぞれ、他人の好みに口を出すなんて野暮なこと。もちろん好みの合う人に出会うことはある。でもそれは偶然その人の好みと自分の好みが一致しただけ。でも本当にそうだろうか。その好みは自分だけのオリジナルなものなんだろうか。音楽の好みに歴史的な経緯はないのだろうか。
 著者は音楽の好みがいかに歴史的に構築されてきたものかを、文献やレコード資料を丹念に調査することから明らかにし、感性の由来を提示しています。研究としての重要性だけでなく、嫌いな音楽を別の観点からもっとよく聴いてみようと思わせ、日々の音楽生活に活力を与えるという点でも興味深い評論だった。