あなたはコンピュータを理解していますか?

 読んでいるうちに、コンピュータの世界に誘惑されてしまう本だ。コンピュータとは一体何なのかを身近な比喩を用いて、コンピュータに関する科学的な知識のない人に分かり易く解説している。その解説の仕方が秀逸だ。科学に無知な人間は、コンピュータなんてどうせ複雑でわけわからない仕組みで作られているんだろうと最初から仕組みを考えるのを諦めてしまうけど、この本は身近な例を出してコンピュータの仕組みを説明してくれるので、コンピュータが身近なものに感じられる。
 コンピュータは今や人々の生活になくてはならないものなので、みんなソフトの使い方は必死で習得しようとする。でもコンピュータが動いている基礎の部分の仕組みに関しては全く知らない人が多いだろう。もちろんそんなことはコンピュータを使う上では知っている必要はないのかもしれない。でも知っているとコンピュータへの向き合い方が確実に変わると思う。著者はこんな面白いことを言い出す。

人間の5つの感覚のうち、コンピュータは触覚ただ1つを持っているに過ぎません。(p.106)

これはコンピュータがマウスとキーボードからほとんどの情報を得ているということを言い表した言葉だ。このことも当たり前のことなんだけど、言われてみるとはっとする。つまり人間同士のコミュニケーションは多くの場合、視覚、聴覚、触覚などで様々な情報をやりとりしているのに、人間がコンピュータに伝えるときは触覚のみだということだ。よくコンピュータを擬人化して「なんで急いでいるときに言うことをきいてくれねえんだよ」とか言ってしまうのは、このことを忘れてしまっているからだろう。

 専門的な言葉は極力使わないようにしているし、使う場合は必ず詳しく解説してくれる。込み入った話も全然出てこない。ただ、あまりにやさしく解説しようとするせいか、どうしても大雑把になっている気がした部分もあった。そうゆう部分は巻末の参考文献を読んでさらに理解を深めたい。