貸出履歴の話

 おもしろくないはなしをします。
 
 朝日新聞で取り上げられたのと、東京の図書館をもっとよくする会の記事が出たので盛り上がった話題みたいだが、なんか読んでいるうちに頭がこんがらがらってきた。混乱しているのは私だけかもしれないが…。
 id:humotty-21:20080124さんが丁寧にまとめてくれているので(感謝)、1つ1つの記事はその辺を読んで貰いたいのだけど、もともと練馬区立図書館が貸出履歴の保存期間を延長したのは、レコメンドサービスのためではなく、資料の汚破損対策のためだった。
 「資料の汚破損対策のために」貸出履歴を保存することと、「レコメンドサービスのために」貸出履歴を保存することを区別して考えたい。「レコメンドサービスのための」貸出履歴の保存の仕方は例えば、doraさんの記事田辺さんの記事など色々考えられるのだろうが、これらの貸出履歴の保存方法はどちらも汚破損対策には使えない。利用履歴と個人情報を分離すれば、当然汚破損本の責任追及は不可能だし、貸出履歴を保存するかしないかを利用者に任せれば、これもまた責任追及はできない。汚破損のための貸出履歴保存はすべての利用者の情報を必要とする。
 なのでレコメンドと汚破損対策の2つの話は同じ貸出履歴保存の話だけど、議論するべき点は異なっているということだ。
 そうゆうわけで「汚破損対策のための」貸出利用履歴保存の話を考えてみる。
 
 東京の図書館をもっとよくする会の記事においては、

  1. 貸出履歴の情報が実際に外に漏洩すること
  2. 実際に外には漏洩していなくても監視されているという圧迫感を利用者に与えること
  3. 貸出履歴をどう利用するか具体的説明がないこと(実際に役に立つのかという疑問、窓口業務を徹底してなんとかしろという話も含む)

だいたい以上三点を理由に貸出履歴の保存期間延長は再考するべきだと書かれている。
 1つ目の理由に対しては、これは民間企業も当然背負っているリスクなんだから、リスクを背負うならやらないっていうのじゃなくて、リスクを背負ってでも資料を守るほうを優先する!と図書館は言うべきなんじゃないのか。責任は取る!個人情報の流用はさせない!とかなんとか。ここは気概をみせたいところ。もちろん、具体的なリスク対策、個人情報の取り扱いの方法に関しては十分すぎるほどの説明が必要だが。
 2つ目の理由に対しても、説明することで理解して貰うことが重要だろう。
 3つ目の理由に対しては、おい、と思う。具体的説明がないのは確かに問題だが、ここで述べられている汚破損対策はあまりに理想論にすぎる。それこそ具体的でない。窓口業務の徹底で乗り切れと主張されているが、まず一人一人の利用者と対面しながら貸出返却処理をしていては、カウンターが足りない。カウンター増やす?じゃあ自動貸出機とブックポストはどうするのか。え?なくす?
 つまり、東京の図書館をもっとよくする会の記事は、貸出履歴保存期間の延長が利用者に与える不信感に関しては指摘しているが、汚破損対策の提案は粗末だということだ。
 練馬区立図書館が迫られている1つの問題(選択)は、自動貸出機やブックポストという利用者の利便性を確保するために、リスクを背負って資料保存のために貸出履歴を残すか、または自動貸出機やブックポストを無くし、利用者には我慢して貰って、リスクを避けるかってことだ。
 後者を選んで利用者に納得いく説明をするのは難しい、利用者サービスという観点から考えて明らかに望ましくないからだ。そして練馬区立図書館は前者を選んだ。ただ、前者を選んでみても、新たな問題が出現する。貸出履歴があると汚破損資料を弁償してもらうのに役立つのかという問題。これが練馬区立図書館が抱えるもう1つの問題なんじゃないのだろうか。
 練馬区立図書館は直前の2人の利用者番号を最長13週間保存するとしたが、この2人というのがポイントだ。資料の汚破損が発見されたとき、直前の1人が「いや、私が借りたときからすでに…」と言ったときに、その前の人まで追求するためなのだろう。でもこれは効果あるのか?2人前となると借りたのが遙か前の可能性もある。そうするともう覚えてもないだろうし。それを考えると、貸出履歴は汚破損対策にはあまり役立たないかもしれない。
 貸出履歴も役に立たず、窓口業務の徹底も現実的でないとなると、別の手を考えなくてはならない。弁償などの対応が図書館員の個人的なスキルに任されていてはいけないだろう。客観的な根拠を示して納得して弁償してもらえるようにしなければ。目立たないきつい仕事だからこそ、当たり前のように完璧にやらないと。こうゆうところをしっかりしないと、どんなにかっこいい新しいサービスを提供しても、利用者に信用してもらえない気がする。

 自動貸出機にデジカメ機能でも付けて、資料が貸出されるときにその資料の状態を記録しておいて、汚破損の場合はそれを参照して責任追及するか。あ…著作権が…。